もう10年以上前になるけど、
俺がまだ学生だったころの話。

そのころ同級生で仲のいい友達と
二人でゲームしたりCD聴いたりして
よく遊んでたんだけど、
たまたまその日はそいつの2歳下の弟も一緒に遊んでた。

たまにサッカーゲームや格闘ゲームするときに
一緒にあそんでたから別に特別なことじゃなかった。

夏休み後半で、いつもどおりクーラーきいた部屋で
三人でゲームしてたんだけど、
誰ともなくずっと部屋の中っていうのも
不健康だねっていう話になった。

それで、夏休みの思い出話になって
家族といっしょにキャンプいったとか海行ったとか
そんな話してたんだけど、
せっかくだからこの3人でこの夏の思い出も作ろう、
みたいな学生にありがちな
ちょっとイタくてアツい話になった。

そうは言っても急なことで
お金使って何かするなんてことはできなかったから、
無難に近場を探検しようって話になった。

で、昼の3時過ぎ頃に汗かきながら自転車こいで、
目的の場所に向かった。

その場所っていうのが
その友達の家から20分くらいのところにある低い山。

正式な名前があるのかもしれないけど
友達の間ではハゲ山とか呼んでた。

その山にある山小屋に行こうってことになった。

その山小屋って何のために
作られたのかわからないんだけど、
工事現場によくあるようなプレハブじゃなくて
屋根は瓦だし壁も土でできてるような小屋。

イメージ的には日本昔話にでてきそうな感じ。

で、その小屋っていうのが
山の中腹にぽつんって建ってて、
下を走ってる公道からも見えるんだけど、
ただそこにはまともな道なんてつながってなくて、
ほとんど獣道みたいのだけで
歩いてしかいけないようなところ。

ハゲ山っていっても草とかあまり生えてないのは
この山とつながってる別の峰で
山小屋がある山は草も木も茂り放題。

山に入っていけそうなところに自転車置いて、
用意もろくにしていかなかったから
変な草にさわってかぶれたりしたら嫌だなと思いながら、
半分這うように獣道たどったのを覚えてる。

それで小屋についたんだけど、
大きさは6畳もないくらいだったと思う。

一応小さい玄関みたいなのと、
奥に押し入れみたいな物置の棚があって、
炊事場とかそういうのは無し。

結構急斜面に立てられてるし山自体も小さいので、
何のために建てられたのかは今考えてもよくわからない。

木の引き戸があって
それは開け放たれてたから普通にはいれて、
すごい狭いのと昼間なので、小屋の中も普通に見えた。

全然怖いとかおどろおどろしいような雰囲気はなくて、
むしろああこんなもんか、っていうくらい。

でよく見ると壁に
これまで小屋に登ってきた奴等が
自分達の名前や日付を書き込んだりしてて、
中には同じ学校の先輩の名前なんかもあって、
来る奴は来てるんだねって話してたのを覚えてる。

家具なんかもなくて、
ぱっとみて中見回してそれで終わり、
っていうところだった

んだけど、その時に友達の弟が
会話とかみ合わないこと言い始めた。

はじめはこっちが言ってることに
適当な相槌でもうってるのかと思ったけど、
どうも様子がへんで

「いや、そんなつもりじゃないですよ」

「そんなこと言ってないし聞いてません」

「来るんじゃなかったな」

みたいなことを普通に話すような調子で言ってたんだけど、
だんだん声が高くなってきて

「そんなこと言ってない」

「嘘つきだ」

「まただ」

とか半ば叫ぶみたいに言い出した。

気持ち悪かったのが、
なんかそれが女言葉で声色も妙に女性っぽいっていうか
普段のそいつとは違う調子になってたこと。

目は宙を泳いでてこっちを見ようとしないし、
顔は何か泣き出しそうな表情になってたから、
はじめはこっちも何言ってんの、
みたいな感じで流してたけど
だんだん怖くなってきて、帰ろうってことになった。

で友達が手をひいて、
帰ったんだけどその辺のことははよく覚えてない。

自転車はみんなバラバラに乗ってきてたんだけど、
帰りも一人一台ずつ乗ってたと思う。

その弟は自転車に乗ってるときは
大人しくしてたように思う。

友達はずっと、大丈夫
もうすぐ家だから、みたいな声をかけてた。

で家に帰ってその友達の家の玄関に弟座らせて、
母親よんで麦茶やらもってきて
みんなで立って弟をとりかこんでたんだけど、
やっぱり変なこと言いつづけてて、

「これはもうどうしようもない」

「(聞き取れず)・・・に違いない。間違いないよ」

「そんなこと言ってるからいつまでたっても・・・(聞き取れず)」

みたいな感じ。

友達の母親も背中さすったり
声かけたりしてたんだけど、
これはちょっとおかしいって雰囲気になってきた。

その内その弟が独り言じゃなくて

「うー、うー、あー」

みたいな声出し始めて、
最後には背筋のばしてきっちりすわったまま、
白目むいて口パクパクしはじめた。

そこで友達の母親が119番に電話して、
すぐ救急車が来て母親と
そこのおじいちゃんと弟だけ病院に行った。

友達の母親が連絡入れたらしくて、
しばらくしたら友達の家で待ってたところに
うちの母親が来て、
一緒に弟が病院から帰ってくるのを待った。

晩になって友達の母親が帰ってきた時に、
何してたのかって友達と二人一緒に聞かれたけど、
あまりに異常だったから
俺達がなにか悪いことしたんじゃない
っていうのは明白だったみたいで、
べつに怒られるようなことはなかった。

それからその友達からも
詳しい事情きいてなかったんだけど、
どうやら一ヶ月くらい
どこか精神科の病院に入院してたらしい。

で、その後は家に帰ってきたんだけど、
それからずっと同じ敷地内にある
もとはおじいちゃんとおばあちゃんが住んでた離れ
(といってもごく普通の一軒屋)で
療養(?)してたらしい。

今はどうしてるのかは知らないけど、
狂って囲われてた感じなんだろうと思う。

その友達とは高校大学と別になったので
徐々に遊ばなくなっていったけど、
あの後弟の話はタブーになってたから
詳しく聞いたりしたことなかった。

で、その小屋っていうのが今もあるんだけど、
突撃する人います?

当時よりツタとかに覆われてて
国道から見上げても分かりにくいけど、
もう近くまで家が建ってきてるし、
山をはさんだ道路の向かいには
コンビニもあるような場所です。

近くの人がこれ読めばピンとくるかも。

未だにその場所が原因なのか、
単に弟がおかしくなっただけなのか
分からないんだけど何故か思い出したもんで。

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