彼女と地元の温泉旅行に行った時の話です。

秋の終わり頃に
海の近くにある温泉街に行きました。

泊まったのは民宿に近い旅館で
そんなに良い所では無かったんですが、
温泉は結構広くて貸し切り露天風呂もあり満足しました。

ただ海沿いだったので浜風がかなり強く、
部屋の窓から「ヒュウウー」という音がしていました。

夜の一時頃に布団に入り、
彼女は先に眠ったようでした。

僕は少し寝付けずに
タバコを吸いながらテレビを見てましたが、
一時半頃に電気を豆電球にして寝ました。

横になって少したった頃、
彼女がガバッと上半身を起こしたのです。

布団を横に並べて寝てた僕は、
彼女の背中を見つめてましたが、
彼女は微動だにせず上半身を起こしたままです。

「どうしたんだろ?」

と思った僕は、彼女の腕を掴んで
自分の布団に引き込もうとしたんですが、

ブンッ!!

と物凄い力で手を振りほどかれました。

「えっ!?」

と思い、自分も上半身を起こし彼女の顔を見ると、
まばたきもせずに真正面を凝視しているのです。

ちょっと怖くなり

「どうした?」

って聞いたんですが返事がありません。

「おい、どうしたん!?」

ってあせり気味に聞き直すと、
首だけゆっくりとこっちに向け、

「この部屋から出ていけ」

と息を吐き出すような、
喉の奥から声を出すような感じで言うのです。

これは普通じゃないと思った僕は、
肩をゆすりながら

「おい、寝呆けてんのか!?」

と問い掛けると、肩にかけた手を物凄い力で掴み、
もう片方の手で僕の首をガッと掴んできました。

その時の彼女の目は、
下から僕を睨む凄い形相に変わっていて、
もう無我夢中で何とか彼女の右頬を張りました。

すると

「痛っ!!今ビンタした!?」

と、普段の彼女に戻っていました。

今起こった出来事を説明すると、
自分はまだ寝てなかった。

でも上半身を起こしてから
ビンタされるまでの事は覚えてない…

との事でした。

とりあえず宿の人に話をし、

「他の部屋に替えてもらえませんか?」

と聞くとすんなり替えてくれ、
そのまま連れて行かれた別の部屋には、
すでに二人分の布団がしいてあったのです。

話を女将さんにして、
そのまま別の部屋に連れていってもらったので、
部屋をセッティングしてる時間など
あるわけがありません。

女将さんには特に詳しく話を追求しませんでしたが、
部屋を替えてくれと言ってくるのが分かってたように思え、
奇妙な気分と不快な気分になり夜遅くですが帰る事にしたら、

「お代は結構ですので…」

との事でした。

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