伝染病の隔離病棟での話

病棟は50年前には既に閉鎖され、
荒れた外観は町の人々に
どこと無く近寄り難い雰囲気をかもし出していた

20年前、
中学生だった頃に
男友達と真昼の肝試しをしたことがあった。

怖すぎて夜やる発想自体無かった

言い出した手前自分が最初に入る事になった

造りは1階平屋で
真っ直ぐな廊下と病室というシンプルなものだった。

入ってみると結構日当たりも良く
通気が良いのか、
かび臭いとか腐っているとかも無く、
意を決して望んだ割に拍子抜けするほどだった

今で言うナースステーションに該当するであろう所にあった
毛筆書きの名簿を見て少し怖くなった程度だ

余裕が出てきた俺は、
次の奴を驚かそうと病室に隠れる事にした

病室のベッドにはシーツが残っていて、
破れ目からワラがはみ出ていた

視線を廊下に移した瞬間

「お母さんお母さんお母さんお母さんお母さんお母さんお母さんお母さんお母さんお母さん」

突然女の子の泣き声がして振り返る。

声がしない、誰もいない、いる筈ない。

鍵をこじ開けてやっと入ったんだ

胸が痛い、
視界がゆがんできた、
早く出なきゃ

「お母さんお母さんお母さんお母さんお母さんお母さんお母さんお母さんお母さんお母さんお母さん
お母さんお母さんお母さんお母さんお母さんお母さんお母さんお母さんお母さんお母さんお母さん・・」

ケモノのような声、動けない、
目の前に何か居る、恐る恐る見る。

それは次に入った友達だった

「何してるの、誰その子」

「え?」

誰も居ない

「はぁうはああああああぁ」

叫び声も出なかったが
無我夢中で入り口まで走った

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