うちの会社のビルに3つあった休憩室の1つが改装され
新しい部署が開設された。

代わりに屋上の一部が職員専用に開放され、
ベンチが設けられた。

好評だったが
一月もしないうちに閉鎖された。

理由は、
屋上から飛び降りる眼鏡の男を見たという多数の報告。

そしてそのたびに呼び出される警備室からの苦情。

この話は安全管理委員会に正式な議題として出され、
討議の末
屋上は閉鎖された。

男は眼鏡にグレーのスーツで小柄。

これといって特徴はない。

革靴を脱いで一息もおかず
柵を乗り越え勢いよく飛び降りるという。

靴はなぜかいつのまにか消えてしまっている。

俺は男を実際に見たわけではないが、
会議に出席していた。

その話を聞いて、
こんなことが本当にあるのか、
と驚いた。

その苦情数のわりには、
社内ではあまり噂にはならなかったようだ。

みんな気が触れたと思われるのが嫌で、
表立って話したりはしなかったのか。

苦情は恐怖に耐えかねた者達と、
警備室からの、
規定に乗っ取った正式な報告書といった形で提出され、
あくまで事務的に処理された。

屋上が閉鎖されたので、
男の目撃談はパタリと止んだ。

一年後、
閉鎖されている屋上に忍び込み、
飛び降り自殺を図った社員がいた。

その事件と例の苦情は関連付けられたりはしなかった。

あの苦情の件は会議でも話題にも挙がらなかった。

俺はお化けを信じてる訳じゃないが、
こんな世の中ではお化けも住みづらいわな。

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