親の友人が経験した話。

彼女が住む地域(自然豊かな田舎)には
心霊スポットとして有名なトンネルがあるらしく、
中でも『だったか』という幽霊の噂が中高生の間で絶えなかったそうだ。

『だったか』という幽霊は
交通事故によって〇くなった老婆の霊なのだが、
生前にかなり強い恨みを持っていたらしく、
未だに成仏出来ない為にトンネルに棲みつき、
トンネルに入ってきた車をものすごいスピードで追いかけるそうだ。

老婆が全力で車を追いかけてくるだけでも怖いというのに、
『だったか』の容姿は怖さを更にかき立てる。

なんと片足はちぎれかけており、
もう片足や両腕はありえない方向へ曲がっており、
顎は外れていて目玉は片方だけ飛び出しているという
ゾンビのような見た目なのだ。

片足がちぎれかけゆえに四つん這いで車を追いかける為、
『ダッタカダッタカダッタカ』
という独特で不気味な足音をしているのだとか。

そんな個性的な足音が
いつの間にか『だったか』という幽霊の名前として
広まったそうだ。


『だったか』がガセネタだったとしても恐ろしい、
そう思っていた頃

親の友人はバイトの帰り(夜19時頃)に通行止めをくらい、
当時はカーナビもガラケーすらも無かったゆえ
警備員に道を尋ねたが
『だったか』が出ると噂のトンネルを
どうしても通らねばならなかった。

心の中で『南無阿弥陀仏…』と唱えつつ
車でトンネルに入ってしばらくすると、
遠くから音が聞こえた

ダッタカダッタカダッタカダッタカダッタカダッタカダッタカダッタカダッタカダッタカダッタカ

次第に大きくなっている、
足音が近づいている

恐怖で息苦しく、
ただひたすらに車を走らせて心の中で念仏を唱える。

ふとミラーを見ると、
道の脇に黒くて四つん這いと思われる低い姿勢の影がチラッと見えた。

ダッタカダッタカダッタカダッタカダッタカダッタカダッタカダッタカダッタカダッタカダッタカ

影のあった方からその音は聞こえる。

恐怖が昂りまくった親の友人は
ミラーを最低限見ないようにして、
車を走らせ続けた。

やがて、トンネルの出口が見えた。

トンネルから出れば音が聞こえなくなるだろう……
と安堵していた。

ダッタカダッタカダッタカダッタカダッタカダッタカダッタカダッタカダッタカダッタカダッタカ

トンネルを出てしばらく走っても
音はまだ続く。

逃げたい気持ちでいっぱいだが、
目の前の交差点にある信号が赤になってしまった。

どうしても止まらなければならない。

ダッタカダッタカダッタカダッタカダッタカダッタカダッタカ

『もうダメだ』

視界の端に映る黒い影は親の友人に………

襲いかかる、かと思いきや
街灯に照らされた黒い影はピタリと動きを止める。

その正体は大人のイノシシだった。

『なんだ、イノシシか〜』

と親の友人は胸を撫で下ろして
無事に帰宅した。

帰宅した後、
一つだけ疑問が浮かんだ。

『車と同じくらいの速度で走るイノシシって居るの…?』

と。

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