『つむじさん』という遊びが、
消防の頃クラスの女子の間で流行っていた。

まず、

「つむじさん、つむじさん、
こちらのツムジにお入りください」

みたいなことを言いながら、
ターゲットの女の子の体操服の背中に指を押し当てて、
ぐりっと左にねじって渦巻きの皺を作る。

すると、次の体育の時間までに、
渦巻きの皺を作ったところに『つむじさん』がドンとぶつかって、
その子を転ばせようとするらしい。

たぶん、暗示の類だと思うけど、
見えない何かに押されるという、
オカルト的な現象を楽しむだけの遊びだった。

それが、いつの間にか

『押されて転ばなければ良いことが起こる』

に進化して、呪文も

「つむじさん、つむじさん、
○○ちゃんに良いことありますように」

に変わった。

最終的には、

「つむじさん、つむじさん、
○○ちゃんの願い事『××』を叶えてください」

になり、
クラスの女子の間で爆発的に広まった。

そして、ある日。

体育の授業が始まる前、
俺含む男子が女子の着替えを廊下で待っているとき、
教室の中で悲鳴が上がった。

女子が一人飛び出してきて、
先生を呼びに行けと言う。

保健係が走り、
担任と保健の先生がやってきて、
意識のない女の子を教室から運び出した。

後から班の女子に事情を聴いたところ、
その子は友達の手を借りて背中に作らなきゃいけないツムジを、
自分で胸に作ってしまったそうだ。

そうして着替えてる途中、
背中ではなく胸を『つむじさん』に突かれ、
仰向けにぶっ倒れて後頭部を強打し、失神したらしい。

幸い、命に別状はなかったけど、
それ以来つむじさん遊びは消滅した。

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