自分が一時期テレビ局に勤めてたときの話。

その時はオカルトやらの全盛期で、
自分のいた局も例に漏れずそういうのを作っていた。

で、そういうのを撮っていると
少なからず怪異に遭遇する。

だからうちの局は、
そういうのに対処できる人を必ず連れていく規則がある。

その人(以後Yさん)の除霊についての話。

初めて除霊を見たのはとある旅館の取材の時。

旅館に着いて開口一番に

「あーやばいかも」

とYさんが監督に話してて、
その日は大事をとって一日様子見、
その夜は景気づけに軽く宴会して寝た。

次の日にYさんと監督が取材箇所の下見に行って、
Yさん曰く

「本当に居るし気が立ってるからやめたほうがいい」

と。

監督としては(幽霊は出なくていいから)仕込みも入れて、
それっぽいものが撮れればいいと言う主義なんで、
やめようと言う事になって上に連絡。
(それほど予算もかかってないし、ほかにも候補があった)

だけど説明中に、
監督が口を滑らせてしまい

『絶対本物撮って来い!』

って言われて撮影強行。

昨日や今日の事もあってスタッフ全員乗り気じゃないけど、
給料もらってるし嫌々ながらも撮影開始。

途中までは順調に進んで撮影も中盤まで行って、
裏方は出るらしい大広間に機材を設置し始めて、
俺もそっちの手伝いをしてた。

すると機材を運んでいた音声さんが、
立ち止まったまま

「うっ…うっ…うっ…うっ…」

って言いながら
その場でユラユラと体を揺らし始めた。

近くに居た俺は、
気分でも悪くなったのかな?って思って、
音声さんが持ってた機材を安全な場所に置いてから、
(薄情とか言うなよ?糞高い機材だったから壊したらクビですむかどうか)

大丈夫ですが?ってきいたんだけど、
無反応でゆれ続けてる。

一瞬、からかってるのかな?って思ったんだけど、
その音声さん、
昔の職人みたいな性格の人で冗談も言わない人だったから、
あ、これはやばいかもって、
ゆすったり名前呼んだりしたんだけど変化なし。

騒ぎを聞きつけて
他のスタッフも集まってきて、
ちょっとした騒ぎになって、
スタッフがYさんを呼びに行って取材は一時停止。

旅館の一室借りてお払い開始。

自分はYさんのお払いを見るのが始めてだったから、
正直わくわくしてた。

最初にYさんの指示で、
憑かれてる音声さんを俺とアシスタントの二人で
(なぜか立とうするのを)強引に座らせて、
Yさんが前に来て何をするかと思えば、
神社なんかでするように
「パン!」って手を合わせてを何回か繰り返した。

そのたびに音声さんの肩が
「ビクッ」って上がる。

それを4、5回繰り返して、
Yさんが

「ん?だめか。そのまま押さえててね」

って言って、
音声さんの背後に回って、
背中から半歩引いた位の距離に立った。

ん?っと思ったら、
おもいっきり振りかぶって、

「スパーーン!!」

って背中におもいっきり平手?

その瞬間、
ありえない位の衝撃で音声さんが正面に吹っ飛んで、
あまりの事で俺もアシスタントも押さえきれずに、
音声さんは正面の座布団の山に前のめりに突っ込むかたちに。

はたから見るとすっごい間抜けにみえるんだけど、
自分もアシスタントもポカーンとしてた。

だっていくら振りかぶったって言っても、
平手打ちでそんなに吹っ飛ぶはずない。

変な例えになるけど、
ドロップキックでもされたような衝撃だった。

Yさん曰く、これで除霊完了。

音声さんもすぐ目を覚まして、
その後は何事もなく撮影終了。
(ちなみに撮影した部分にはそういうのゼロ)

その後聞いたけど、
Yさんの除霊はそれでいいらしい。

昔から大半の霊は手を打つだけて払えて、
それてもだめなやつは力いっぱい叩けば払えるらしい。

あと、それが本業じゃなくて、
本業は家具かなんかの職人やってるそうだ。

俺は局もうやめちゃったけど、
Yさんとはよく飲み行ってる。

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