私、青森に住んでいる者なのですが、
ちょっとローカルなネタを提供させていただきます。

みなさん、
イタコって恐山にしかいない、と思っていませんか?

そして、
バラエティなんかでネタにされるように、
みんなインチキだと思っていませんか?

でも、イタコは恐山だけではないのです。

そして、みんながインチキとは限らないのです。

津軽地方にもイタコがいるのです。

伝統的に、
目の見えない女の人がなるケースが多いそうなのですが、
昔は目の見えない人の一部が、
津軽三味線を弾いて家々を回る『ボサマ』と呼ばれる門付け芸人になり、
感覚の鋭い人がイタコになるそうです。

まあ、現在ではほとんどいないようですが。

実は、
友人の祖母が数少ない津軽イタコの生き残りということで、
教えてもらった話です。

津軽イタコは、
恐山のイタコのように組織だっていないので、
あまり有名ではないのですが、
地域の年配の人たちには当然知られており、
いろいろ頼まれることがあるそうです。

ところが、みなさんがイメージしているような、
霊を降ろしてどうこうという感じではなく、
普段は、どちらかというと占い師に近いみたいです。
(もちろん、恐山のイタコのように霊を降ろすこともできます)

友人も幼い頃から、
おばあちゃんの不思議な力を目の当たりにしており、
(無くした物を見つけるとか、
当事者しか知らないことを言い当てるとか)
深く信用していたそうです。

数年前、津軽地方の某市で、
市議会議員が殺される事件が起きました。

犯人の手がかりもない、
というニュースを見ていた友人は、
おばあちゃんに、

「おばあちゃんって、
こういう死んだ人の霊を呼び出して、
犯人知ることとかできないの?」

と、なにげなく聞きました。

すると、おばあちゃんは、

「いつも身に着けていた物とか無いと、
人の霊を降ろすことはなかなか難しいんだよ」

と答えました。

「なるほど、そんなもんなんだー」

友人もなにげなく聞いたことなので、
その程度で話が終わるはずでした。

ところが、
やたらと神妙な声でおばあちゃんが、

「でも、もし縁がある物を持ってきても、
この人の霊は降ろせないけどね」

と言いました。

驚いた友人は、

「どういうこと?」

とおばあちゃんに聞きました。

「この人は、
とても多くの人に恨まれて死んだので、
魂が地獄に堕ちてしまった。
こういう人の霊を呼び出すことはできない」

と、おばあちゃんは厳しい顔で言いました。

後からわかったことですが、
この殺された市議会議員は副業で(正業なのか?)貸金業をしており、
多くの人から恨みを買っていたようなのです。

「確かに、
実際に殺した犯人は一人かもしれないけど、
何十人という人間の恨みが渦巻いている。

だから、
もし犯人を知っている人がいたとしても、
証言も出てこないし、証拠も出てこないよ。

何十人もで殺したのと同じようなものだよ。
だから、この事件は絶対に解決しないよ」

と言うおばあちゃんの言葉に、
友人は心底恐ろしくなったそうです。

どうやら2009年現在でも、
この事件は未解決のままのようです。

以上で終わります。

なお、会話部分はわかりやすくするために、
標準語で再構成しました。
(津軽弁を文章にするとさっぱり理解できないですからね)

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