会社の先輩Aさんに聞いた話。

Aさんが帰宅するため、
夜の九時頃電車に乗り、
座れる場所がないかとキョロキョロあたりを見渡すと、
隅の方に空いてる席をを発見した。

その隣には、
鈴木京香似の美人が文庫本を読みながら座っていた。

Aさんは彼女の隣に腰を下ろしながら、
おお、美人だ!美人はどんな本読んでんだろ?と思いつつ、
彼女の手元をチラリと見た。

彼女のマニキュアがほどこされたスラリと長い親指の上に、
黒の太いマジックで『サブリミナル』と書かれてあった。

左手の親指の上にも
同じく『サブリミナル』と書かれてあった。

Aさんは、
…変な人だなと、
思わず彼女の顔を見てしまった。

彼女は、
顎はずれるんじゃないかと思うほど大口を空けて、
Aさんをみつめていたそうだ。

と、急に唇をタコのように突き出し、
声になっていない声で「ぶ」と言った。

今度は唇を大きく横に開いて、

「り」

また唇を突きだし、

「み」

そのひとつひとつが
異常にオーバーアクションだったそうだ。

Aさんは脅えつつも、
その後『な』と『る』がくるのかと待っていたが、
彼女は「み」まで言うと、
何事もなかったようにまた文庫本を読み始めた。

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