今から8年ほど前、
彼氏とその友達と、私と私の友達との6人で遊んでいて、
山に肝試しに行った時……というか、騙されて行った時の話です。

車の中でその話を急に言われて、私と私の友人は怒りましたが、
チャラ系だった彼氏は聞く耳を持ってくれませんでした。

向かった山には、
廃神社が山の中に転々とあるような場所らしく、
そういった怖いのが苦手な私は、
とても気持ちが暗くなっていました。

その彼氏の友人の中に、
いわゆる『友達の友達』の男の人(Rさんとします)が1人いました。

最初に紹介された時に挨拶したのですが、
Rさんはにっこり笑って会釈をするだけでした。

車の中でも、楽しそうに話す彼氏達をよそに、
Rさんは一人で音楽を聞きながら、
真っ暗な外をずっと見ていました。

結構イケメン+金髪茶髪がほとんどだったメンバーの中でも
一人黒髪だったのもあり、
何というか、色んな意味で目立っている人でした。

車を止め、
さあここから山道を歩いていくぞと言われた時、
正直泣きそうでした。

懐中電灯があるとは言え、
あたりは本当に真っ暗。

私はミュールを履いていましたし、
草木も生い茂っていて……

道中、私はずっと彼氏の腕に抱きついていました。

やっべーやっべーとか
バカ笑いしている面子にイライラしながら。

そのまま数分、
懐中電灯で照らしながら歩くうちに、
すぐに行き止まりに行き着いてしまって、
彼氏とその友人達は少しガッカリした様子でしたが、
私はもう帰れると思い少し安心しました。

そうして、皆が引き返そうとしたときでした。

パキ、パキ、と何かが枝を折るような音が、
こちらに近づいてくるのです。

一瞬にして全員硬直し、
じっとその場から動けずに居ると、
やがて懐中電灯の明かりに照らされたそれが現れました。

それは一言で言うと、
『等身大の黒い日本人形を乗せたリヤカーと、それを押す黒い2つの手』
でした。

手より向こうは、
どういうわけか何も居なかったのです。

黒い手はゆっくりとですがリヤカーを押し進めながら、
こちらに近づいてきました。

しばらく皆固まっていましたが、
誰かが声にならない声を上げ、それに続くように、
リヤカーの脇をすり抜けながら全員走り出しました。

本当に運の悪いことに、
このタイミングで私のミュールの紐が切れてしまい、
足を挫いてしまいました。

痛くて走れないので思わず彼氏の名前を呼びましたが、
彼氏は私を置いて逃げてしまっていました。

異形のものが居る、
深夜にも近い時間の山奥にたった一人。

私はずっと泣き叫んでいました。

しかし、パキ、とまた音がしたと同時くらいに、
引き返してきた人が居ました。

Rさんでした。

この状況で戻ってきてくれる人が居たという事実に、
嬉しさというより驚きの方が強かったです。

「立てるか?」という声に、
私は首を振りました。

Rさんが歯軋りしたような顔を浮かべた時、
私の左側に、あのリヤカーと黒い手がすぐそこに居ることに気付きました。

息が止まりそうにりましたが、
ふとRさんの方を見るとニヤリと笑っていて、
「ちょっと此処で待っていてくれ、話をしてくる」と、
突然そのリヤカーに近づいていったのです。

そのまま黒い手の側に行き、
身振り手振りで何かを話していました。

黒い手は、
Rさんと暗闇を交互に指差しているような動作をしていました。

数分後、スタスタと帰ってきたRさんは私を負ぶってくれ、
そのまま運んでくれました。

後ろが気になりましたが、
振り向く気にはなりませんでした。

車があった所に着くと、
なんと彼らは私達を置いて逃げていたのです。

この時点でもう、
彼氏とは別れるつもりでいました。

ため息をついたRさんは、
「このまま来た道を歩くしかないなあ」と、
なんと私を負ぶってそのまま2キロほど歩いてくれました。

そうして最終的に最寄の駅のタクシー乗り場まで着いて、
私達はタクシーで帰りました。

車の中で、
「さっき、何を話していたんですか?」と恐る恐る聞くと、
Rさんは「一応、謝ってきた」とだけ言いました。

私はと言うと、もうRさんに惚れてしまい、
その場で付き合って欲しいと言いましたが、

「絶対言うと思った
w止めといたほうが良いよ、そういうのは、止めといた方が良い」

と言われてしまい、
そのまま何も言えませんました。

その後、元の彼氏からは何度か連絡がありましたが、
はっきりと交際を断りました。

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