母から聞いた話です。

うちの母の里はとても海が美しいところで、
集落の向かいは小さめの穏やかな浜があります。

母がまだ小さい頃にその浜に、
随分遠い村から赤ちゃんを連れた女の人がやって来て、
赤ちゃんを道ずれに入水自殺をしてしまったそうです。

遺体は浜にあげられます。

この辺りの村では、
海で亡くなった人を連れて帰る時に、
ちゃんと声にだして

「一緒に帰るよ」

と声を必ずかける習慣が昔からあるそうで、
それをしないと、
そこに残ったままになってしまうと言われています。

女性の身元が分かり、
その亡くなった方の旦那さんが浜に2人の遺体を引き取りにきたのですが、
よその村の人なのでこの習慣を知らないものですから、
遺体に声をかけずに連れて帰ったそうです。

それから夜の浜に、
頻繁に赤ちゃんを抱いた女性の幽霊が出るようになったそうです。

目撃されるだけでなく、月が綺麗に出た晩は、
必ず赤ちゃんの鳴き声が浜から聞こえてきたそうです。

頻繁に目撃されるのと、
その女性の幽霊の本当に寂しそうな立ち姿が
あまりにも可哀相だという事で、

村の人々で相談して、
その女性の旦那さんに手紙を書いて、
改めて迎えに来てもらったそうです。

そして、浜で

「おい、帰るぞ」

と声をかけて連れて帰って貰ってから、
その女性の幽霊は出なくなったそうです。

母の里の実話です。

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