大学に通っていた時友達になった奴がいた。

すごくいい奴で、一緒に遊んだこと数知れず。

仮にRとする。

基本的にノリのいい奴なんだが、
遊んでいる最中に

「ちょっと抜けるわ」

と呟いて、
そのまま帰ってこなくなる。

最初は

「Rが電波受信しましたー!」

とか、

「ずっと抜けるって言えよ」

なんて囃してたんだけど、
あんまり頻繁に続くことがあったんで、
何処に行くのか知りたくなって、何回か尾行したのさ。

結果は全て失敗。

始めのうちは2~3人だったから途中で見失うのも分かるけど、
最後は12人で連絡取り合いながら追った。

それでもダメだったんで、

「Rってちょっとおかしくね…?」

みたいに感じる人が出てきて、
遊ぶ友達が少し減ったりもしたけど、
俺は特に気にしなかった。

そんなRが何をやっていたのか、
俺は偶然知ることとなる。

時間は深夜。

終電を逃した俺達は、
家が同じ方向だったこともあって
一緒に歩いて帰っていたんだ。

今日あった事を話しながら家に向かっていたんだが、
だんだんRの口数が少なくなって、

「ひょっとしてRも眠いんかな~」

って思ってたら、
Rが突然立ち止まった。

どうしたのか聞こうと思ったら、

「ちょい静かにして」

と真剣な顔で囁くR。

言われるままに黙っていると、
左前方を睨み始めるR。

なにこれ、
ひょっとしてRって見えちゃう人?なんかいるの?

ガクブルする俺にRが口を開く。

「なあ、手伝って欲しいことがあるんだけど頼めるか?」

ど、どういうこと?

かなり腰が引けてる俺に、Rはニヤッとして
「何ビビッてんだよ。
この前公園で倒れてた人がいたって聞いたから、
ちょっと見回りしたいんだよ」

そういえばこの先に公園がある。

お人好しなRとしては、
何かあったらと思うと見過ごせないんだろう。

眠かったがRの精神の平穏のために公園に入り、
俺は右から、Rは左から確認することにした。

といってもごく普通の広さの公園だ。

眠くても電灯があるし、
誰か倒れてたら余裕で気づく。

眠気防止に鼻歌を歌いながら、
軽ーく見て回っていると
植え込みがガサッ!と音を立てた。

「うがああああっ!」

超絶ビビッてズサる俺。

ドキドキしながら耳を澄ますと、
呻き声も聞こえてくる。

おいおいマジで倒れてんのかよ!

ケータイのライトで照らしながら植え込みを覗くと、
立ち上がりかける男2人と目が合った。

あれ?起きた?と戸惑う俺に対して、
なぜか反対方向へよろめきながらダッシュしていく2人。

その2人が、
横から飛び出てきたナニモノかに殴り倒された。

あっれえええええなにこれ?

パニクる俺の足元から、

「助けてください…」

不意打ちで
またしても超絶ビビる俺の目に飛び込んできたのは、
半裸の女性だった。

訳が分からないまま、
とりあえず上着を着せる手伝いをしていると
Rが近づいてきた。

というか、
方向から察するに、さっき2人を殴ったのがRだ。

「大丈夫ですか?立てますか?」

なんて、
いやにしっかりした対応をしながら
テキパキと女性を介抱するR。

そして、そのまま話し込む2人。

ぼそぼそと5分ぐらいしゃべって、
やっと2人は立ち上がった。

「事情は後から話すから、
この人家まで送ってってくれないか?
俺、ちょっとやることがある」

お、おう、と頷いて、
女性を背負う。

公園に残るらしいRは大丈夫かな、
と不安に思うも、女性に言われるままに歩く。

最初はしゃくりあげていたが、
女性の住むマンションに着いた頃にはだいぶ落ち着いたようで、
別れる際には何回もお礼を言われた。

とりあえずRに連絡をしようと電話を掛けるが、
電源を切っている旨のメッセージが出るばかり。

まさかあの2人に仕返しされているんじゃないか…?
と焦って公園に戻るも、誰もいない。

それならRの家に行ったのか!?
いやその前に警察か!?

またしてもパニクる俺だったが、
ちょうど電話がかかってきた。

Rからだ!

「Rぅぅぅううううう!」

叫びながら電話に出ると、
Rは今別な場所に移動してるから安心してくれ、とのこと。

『ありがとうな』とRからもなぜかお礼を言われ、
その日の午後に会う約束をして電話を切った。

気になることがたくさんあったけど、
精神的な疲れが大きくて、家に帰ったら速攻寝た。


そしてRから聞いた話。

Rは悪意とか敵意とか、
そういうものが見えるらしい。

時々遊びから抜けていたのも、
「悪いことをしようとしている人」を発見したので、
犯罪防止のために尾行していたから。

公園に入ったのもそういうのが見えたからで、
(女性がレイプされていたことまでは分からなかった)
最初から位置は分かっていたんだけど、
俺を囮として使うために右から回らせたんだと。

俺らがRを尾行していたのも分かってたから、
振り切るのは簡単だって言ってた。

こういうのも霊能力とかに入るのかな?

質問あったら俺で分かる範囲で答える。

もし興味があるなら短いけど別なエピソードも書く。


ーーーーーーーーーー


全員に信じてもらえるとは思ってないし、
誰かの暇つぶしになれば十分ですわ。

そんじゃ別なの書く。短いけど。

R曰く、
ヤバいのに2回出会ったことがあるらしい。

人で1回、人以外(たぶん)で1回。

それぞれ別な場所だから、
関係ないと思うって言ってた。

人で会ったのは、
初夏に彼女と某テーマパークに行った帰り道。

電車に乗ってたら
次の駅からヤバい気配がビンビン伝わってくる。

R冷や汗かきまくり。

彼女に大丈夫か何回も聞かれて大変だったらしいけど、
冷房効いてる車内で一人だけ汗かいてたら、
そりゃ体調おかしいように見えるわな。

なんとかごまかしながら、
いよいよ問題の駅に停車した。

ヤバいのが乗るか乗らないか気配を窺っていると、
どうもこちらに近づいてくる。

ありえないわ、マジありえないわ…と
頑張って普通の人を装うR。

そしてヤバい奴が現れた。

窓の外から車内を見ながら、
Rから見て右から左へ歩いていく。

外見は男で、
至って普通だったそうな。

危ない物持ってそうな感じでもないし、
危ない挙動してるでもなし。

目つきも普通だし。

だから余計怖かったって言ってた。

誰にも分からないなら、
どこにだって行けるよな、って。

そいつはそのままフラフラ~って別な車両に移ったらしくて、
でも乗り込んじゃったから何駅か一緒に移動した。

その間、
何かするんじゃないかってヒヤヒヤしてたけど
問題なかった。

でも、

「いつか爆発するんだろうな。
その時、なるべく周りに人がいないことを祈る」

って。

現時点で動いても、
逆にRが危ない人になっちゃうから、
何もできないのが辛いって言ってたよ。


ーーーーーーーーーー


人以外(たぶん)は、
とある心霊スポットの山へ行った時。

男2人女2人で、
自称霊感ある女の子の霊体験を聞きながら車で山道を走る。

なんだかんだ言いながら結構盛り上がってきて、
Rもノリノリでネットで仕入れた怖い話を披露していると
件の山に着いた。

車を降りて、

「雰囲気あるわ~」

なんて森の中へ突入しようとする男。

それを

「怖いからやめなよ」

と静止する女2人。

Rは、
ヤバいけどこれ大丈夫なんじゃねえのと判断し、

「イケるイケる、おい男、幽霊捕まえて売ろうぜー!」

とかバカ話しながら森へ。

入って10数メートルでゲロ。

「気持ち悪い」

連発するR。

騒ぐ女2人。

つまらないつまらないとブーブー言いつつ
車を運転してくれる男。

結局その日は解散になり、
『車酔い』で体調の悪いRを男が送るハメに。

先に女の子達を下ろし、
二人きりの車内で男が口を開く。

「Rさあ、今まで体調悪いことあったっけ?」

そう、俺も話を聞いてて不思議だったのが、
Rがゲロを吐いた点。

健康優良児Rがゲロ?なんだそれ。

それで男にも真相を話したらしい。

「あの山ヤバいよ、近づくな」

と。

Rの感覚で言うと、
最初は檻に入った虎だと思ったそうな。

要は近づき過ぎなきゃ、
向こうもこっちに気づかないだろうと。

それが速攻でバレて、
しかも強さが分からないぐらい強い。

で、吐いちゃったと。

「化物のオーラってすげえんだな、マジで」

って笑ってた。

皆も危ないところには近づかない方が無難ですよ。

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