『ようくりげっきょはまからうん』
という言葉をご存知ですか?

恐らく知らないでしょう。

これは恐山に伝わる、
呪いを抜く為の言葉です。

イタコ達は降霊と呼ばれる儀式を行い、
霊界からのメッセージを現世の人に伝えます。

ですが、
当然お分かりでしょうが、
9割以上がインチキです。

昔は組織的な連携と掟がありましたが、
長を世襲していた名代が根絶してからは無法地帯となり、
怪しげな宗教や、インチキ占い師の行きつく場所となってしまいました。

ですが依然として、
他に身の置き所がない本当の霊能力者達や、
自分自身の力を生かさんが為、
または、悪影響をおよばさないため、

山に篭る人たちは多くはありませんが、
5年に1人くらいの割合で今だにいらっしゃいます。

この話は聞かれる方も、
当然強くなければ、
何かしらの悪影響がでるかもしれません。

興味本位や、霊感が強い、
もしくは自意識過剰な方も、
読むのはお控え下さい。

これは、あるイタコの告白であると同時に、
私の懺悔です。

読む前に口になさって下さい。

背筋を伸ばして座禅か楽な姿勢をとり、
手を合わせ半眼の状態になる。

目線は自分の前2メートルほど先の地面。

『ようくりげっきょはまからうん』


夏でした。

暑い日でした。

私は山篭りしてますけ、頼るものおらん。

子供のころっけ、家さいたら、
父と母と姉のほかに、
一緒に飯くうさる者がおる。

わしは、
その黒い人が一緒になって飯くうとる姿を、
じーとみとった。

父ははまがさりじゃきゅーて、
飯そそのかしとるわしを、
手のばして叩きおった。

しから、黒い人が手ばのばしけ、父の首を触った。

父は昏倒して、
十日ばかり目覚めンかったよ。

黒い影をよう見たら二つの目があるけ、
よーく見たら、その目が苦しそうな顔じゃった。

丸い白い顔が、
おびえたようにワシをみとった。

遠目にはそれが白い小さな目のように、
暗い顔に二つならんどる。

そんなものがよく見えるようになった。

小学校さばいくとさ、
友達の頭が二つある。

ひとつはわろーとるがしゃ、
もうひとつの顔が横にずれてはみ出して、
死にそうな顔しとるけ。

こりゃあかんーいうて、
そのこつれて衛生室へつれていきました。

先生に叱られてばかりじゃった……。

しばらくぶりに学校いくと、
その子がおらん。

病院へいきました。

そこではそのこが辛そうにおるけん、
泣いてみちゅうが、
はみ出したもう一つの顔は、
もう死んどったけんが、
もうあかんちゅうてほろほろ泣きました。

したらば先生もないちょった。

その子はその年の秋頃しにました。

こげな見えるのが自分だけやと知りうるが、
女学生のころで部屋を借りました。

部屋は綺麗でしたが、
真中に女性の右足だけが立ってました。

足の上の部分は黒くかげってて、
見えませんでした。

私は恐かったけども、
贅沢はいえんものですから、
その右足には近づかないゆーにしときました。

大抵がそれでよかので。

ですがある日、
風呂こ入って髪を湯船につけてたら何かおかしく、
気がつけば髪がまっすぐ湯船にはいってる。

その先に、
わしの知らん女子のふやけて腐った顔が、
私と睨んで沈んでて、
髪がお湯の中で、
そのまま私の髪と繋がってる。

白目の無い真っ黒の目でした。

わしは次の日には髪切りました。

そごな事がほんち多くて、多くて、
泣けるごとしてましたから、回りは心配します。

そごで、
ある高名なイタコさんが物見遊山で来てましたけ、
親戚が頼んで見てもらいました。

したらば、
そのイタコさん腰ぬかして言いました。

「あんたは死んだまま生まれとるけ、霊ばひきよせる」

それで山篭るしかないちゅーて、
連れてかれました。

かなしゅーて、かなしゅーて、かなしゅーて・・・

どがして私に見えるがげん、
こげな山こもらなあかんのって、
ずっと思いました。

悔しくて、悔しくて。

山さで修行ばさせられるとが、
痛くて泣いてばかりでした。

あと寂しかった。

親も友達も何度か来てくれましたけ、
その度うれしかとやけど、
その度に親も友達も、
背中にボロキレに身をつつんだ老婆や老人、
埋められたのじゃろ、
ぐちゃぐちゃにつぶれちる男なんかが必死にしがみついちゅぅ。

このままじゃこの山の餌食なりますけ、
師匠とも話して、私のとこへこんがいいとしました。

泣いて泣いて。

寂しかったけど、
これも修行じゃー修行じゃーって我慢してました。

遊びたかった。遊びたかった。

ほとんど遊んだ事ありませんけ、
遊びたかった。

修行は基本的に断食ですけら、
いつも腹すかせとりますが、
霊力は高めるがごとくあるがに、
色んな者が見えるようになりました。

一番弟子となりました。

わしはじゃからいろんな霊を見て、交霊して、
沢山の悲しみ苦しみ怒り嘆き、刻みました。

殺された霊の苦しさはたまらないけ。

一度なんかは、
殺した男が殺された女性の降霊を頼みましたけ、
山につれていって穴に埋めました。

山は私がおさめとったけ、
村人さ使ってそげな事ばするようになってけ、
この両の手おってもいえんくらい人を殺めました。

埋めて殺すとじーっとみとりますと、
土の中からやがて顔がすぅっと出てきます。

首から上だけが苦しみに歪んだ顔でつきでとりますけ、
私はそれをとどめまして、
顔を潰す為に置き石を打ちつけます。

すれば永遠に、
霊体のまま頭を潰された苦しみを味わうわけです。

霊体が潰された石の下でうごめくのは、
虫の潰されたようにみえますけ、
わしはいつもそれを見て笑うりました。

それをさすがために恐山では、
いつしかわしの真似して、
石を積んでいる場所が増えました。

わしはそれを見て、石の下を見ます。

たまに潰されてる顔がありますけ、
わし以外にも見えるものがおったのじゃけ、うらしまへん。

わしはそが悪行をゆるせんちゅう、
若いイタコがおりました。

わしはそげな掟を守れんがごと言うのが腹立たしくありましたけ、
村の男にたのんで、その後に石を沢山のせて埋めました。

しからが、そのおなごが力が死んでからすごくて、
わしが石をおこうにも石をおかせん。

わしは自分のこうべに、
そのおなごの指がはいったのをしりました。

憎いことに、
その指がわしの頭の骸骨の内側を掻く。

がりりがりりと。

わしは痛くて痛くて、痛くて痛くて・・・

わしもうちの目で見たら、
その指が薬指で指輪がはまっておりましたけ、
このおなごも霊力があるがために、
家庭を捨てて身を清めに来たことと知りました。

わしは10人の命をつかって除霊をしましたが無理でした。

悔しいのほんとに。

なんでわしがこげな事で命をおとすがじゃと、
くるもん、くるもんに気付かれんように、
呪いをかけてかけてかけて・・・

死ぬまでわしはかけつづけました。

ですが、この女の呪いにはかてん。

わしは98歳で死なんといかんかった。

でも死んでもまだ痛い、痛い、痛い・・・

助けてくだしゃれ、
助けてくだしゃれ、
この痛み・・・

たすけて、呪い呪わぶぬしが身代わり。

わしのこの痛みをとってくだしゃれ。


私はイタコに、
以上のことを話してもらいました。

その女性は恐山では最高の力を持ってますから、
この呪いはきかないとの事でした。

その女性が指に錆びた指輪をしてたので伺うと、
やはり、埋められて腐敗してた骨とともに出てきたので、
供養の為に身につけているとの事でした。

詳しい時期は聞き出せませんでしたが、
おそらく戦前にいたイタコだということです。
(長だったはずなので、個人名まで本当は知っているはずです)

私はその場でお払いをしてもらいました。
(最初にお伝えしたものです)

ですが、生々しい、
死んでも苦しみ続ける地縛霊の声を聞いたとき、
ああいう声が街のあちこちにも満ちていると説明をうけ、
私はその取材終えました。

後日、
その現場に居合わせた友人が死にましたが、
その件に関しては恐山には行ってません。

お払いをうけさせる前に、
用事で先に帰るよう指示を出したのは私でした。

頭痛を苦にしての自殺でした。

関係ないとは思います。

私はお払いをしてもらってましたし。

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