学生の時某ファストフード店で働いていた。

冬のある日、
朝ピーク時間の前にフロアにトレーなどを下げに行ったら、
窓際の席に女性のお客様がいた。

コーヒーとポテトを召し上がりながら、
頬杖を着いて本を読んでいらした。

1時間くらいしてまたフロア清掃に行ったら、
同じ格好でいらっしゃる。

まあ別にファストフードなので、
何時間でもいらっしゃる方は居る。

1時間位してまたトレーを下げに行った時、
まだその方は同じ格好でいらっしゃった。

その時手が滑ってトレーを落としてしまった。

バターンバタバタン・・・・・音が響き渡る。

フロアにいらっしゃったお客様が一斉にこっちを見る。

でも窓際の女性の方は、
ぴくりとも動かない。

また30分位してフロア清掃に行くと、
まだ窓際の女性はいらっしゃった。

机を拭きながら近くに寄ってみると、
その方は瞬きをしていない。

もう日差しが窓から入っていて、
そこそこまぶしいのに。

えっ?と思いながらよく見ると、
やはり瞬きをしていない。

頬杖をついている腕もぴくりとも動かない。

当然本のページをめくる様子も、
コーヒーを飲む様子もない。

本当によく出来た置き物の様だった。

また1時間くらい後、
自分が休憩に出る前、
最後にフロア清掃に行った。

まだ窓際に女性がいらっしゃった。

最初に見た時と同じ姿勢は変わっていなかった。

いい加減なんか怖くなって、
その女性に声をかけた。

「お客様」

反応はない。

失礼になるし、
CSに連絡されるの覚悟で肩を強めにたたいた。

「お客様。そろそろお席が混み合いますので・・」

その途端、ビクンと肩が跳ねた。

「まだ9時前でしょ!まだいいじゃない!」

「あの・・・お客様・・・ただいま11時でして・・・」

「えっ?!」

「お客様ただいま11時でして・・・
これからお昼で混み合いますので・・」

「えっ?!」

腕時計を確認される女性。

その顔は本当に驚いているようだった。

私の顔と腕時計と窓の外を何回も見て、
女性は片付けもせず走って店を出て行った。

女性の残していったトレーを片付けるため、
飲み残されたコーヒーをゴミ箱に捨てに行った。

まだコーヒーのカップは熱かった。

お代わり買った?とも考えたけれど、
買いなおしに来た記憶はない。

持ち込み?とも考えたけれど、
女性のカバンは小さめで魔法瓶など入っていそうになかった。

よく一瞬だと思ったら、
何時間も経っていたという話を聞くけれど、
もしかしたらあの女性はその体験をしていた?

私は外側から彼女を見ていた?

その女性は時々その後も来ていたけれど、
何時間もいらっしゃったことはなかった。

本当にあの1日だけ、
彼女に何か起こっていたんだと思う・・・。

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