年寄りに聞いた話。

初夏のある日、
山で仕事をしていると桜の花びらが落ちてきた。

不思議に思って首を巡らせたが、
辺りには桜の木の一本すら見当たらない。

ひらり ひらり

薄桃色の花びらは、
夕刻になって山を下るまで、
どこからともなく降り続いた。

里に入ってすぐ、
地蔵堂の前でしゃがんで手を合わせている妻に出会った。

「おめでた、ですって…」

小さな声でそう告げると、
妻は少しはにかみながら微笑んだ。

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