ふに落ちない話。

山の中で、毒の実を食べたことがあります。

桑の実のような濃い紫色の、つるつるした実。

山の中で出会った女の子からもらった実でした。

「甘くておいしいよ」

と言われて、
私と従姉は迷わず口に入れました。

一瞬、甘味を感じたと思ったのですが、
そのあとから、なんともいえないびりびりと痺れる感覚が、
口の中いっぱいに拡がりました。

まともな言葉も出ずに、

「あうううううう…っ!」

とうめきながら口の中の実を吐き出し、
慌てて従姉と共に伯母さんの家に帰りました。

つばを吐き出し、
何度もうがいをしては、
ふたりで30分ほどあえいだあげく、
ようやく口の痺れは薄れていきました。

「何で、知らない実を食べたりしたのっ!!」

と、母と伯母さんにこっぴどく怒られました。

「だって…」

と言い訳をしようにも、
知らない子からもらった…なんて言おうものなら、
なんだか大事になりそうだったので、
だんまりを決め込みました。

結局、

「これからは2度と知らない実を食べないこと!」

と厳命されて、
その場は落ち着きました。


その日の夜、
お泊りで従姉の隣のふとんに寝ながら、

「くやしいよね~」

「ひどいよね~」

と、ボヤキとグチまくり。

でもふたりとも、
あの女の子の事は言わなくてよかったとしみじみと思っていました。

だって女の子は、
あの紫の実を平気な顔でいくつも食べていたのだから…。


その後、私も従姉もすっかり大人になったけれど、
どことなくあの実に似ているので、
いまだにふたりともブルーベリーが嫌いです。

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