我が家の洋室で起こった話。
我が家には客間とは名ばかりの洋室がある。
来客は多いが、みんなリビングに通してしまうので、
洋室に通されるのは家庭訪問時の教師くらいだった。
そうなると必然的に物置代わりになるもので、
古い本やレコード、
存在を忘れられたワインやウイスキーなんかが並ぶようになった。
その一角に、
十数体の人形が保管されている戸棚がある。
戸棚の中は人形が隙間なく飾られていて、
入り切らなかったのか3体ほど戸棚の上に置かれていた。
人形は祖父母が国内旅行の際、
現地で買ってきたものばかりだ。
例えば、青森で購入したらしき、ねぶた祭の人形。
沖縄の琉球舞踊人形、徳島の阿波踊り人形…
日本全国津々浦々のお土産が並んでいる。
みんなきらびやかな衣装を纏っているので、
子供の頃はよく友人や従姉妹とのお人形遊びに担ぎ出された。
人形遊びから始まり、
私はよく洋室に入り浸るようになった。
テレビを見たりゲームをしたり、
勉強もここですると捗った。
友達も呼んで、
毎週ワイワイ遊んだりゲームをした。
私にとってリビングよりも思い出が詰まった部屋だ。
ある日、
いつもの如くゲームをしていると、
斜め後ろ方向から視線を感じた。
ふと目を向けると、
棚の上に置かれていた3体の人形が全員一方向を見ている。
視線の先はテレビ画面だった。
何となく違和感を覚えたので、
3体とも中の人形と同じ向きに変えた。
後日、テレビを見ている最中にふと見てみると、
また人形は3体揃ってテレビをみている。
その後何度か向きを変えたつもりなのだが、
人形はいつもテレビを見ていた。
何となく、テレビを見ていたいんだなと察し、
そのままテレビ方向に向けたままにすることにした。
時は流れ大人になり、
あまり洋室に篭ることもなくなったが、
人形は相変わらずテレビ方向を見ていた。
そんなある日、
『世にも奇妙な物語』が放映された。
家族が見たい番組と重なっていたため、
久々に洋室でテレビを見ることにした。
この日の放送は内容までは覚えていないのだが、
巨大な生首が出てきた。
天井にまで届くほど大きな、黒ずんだ坊主の生首。
この手のドラマにはあまり動じない私だが、
さすがにこの生首は気味が悪かったのを覚えている。
そしてクライマックス、
主演女優が生首に取り込まれて死んで?しまい、
ストーリーは終了。
ホラー特有の演出にやや放心気味だったが、
CMが流れ始めてやっと我に返った。
ドラマも終わったことだし、
テレビを消してソファーを立とうとしたその瞬間、
振り向きざまに、あるはずのないものが目に飛び込んできた。
ソファーの背後には書棚があり、
並んだ分厚い本の手前にそれはあった。
生首を両手で抱えた、
首無しの阿波踊り人形であった。
恐らく経年劣化で首がこそげ落ちてしまったのだろうが、
阿波踊りを踊る手にうまい具合に首が乗っかり、
顔はこちらを向いていた…
しかし入室時にこんなものがあったか?
そもそも戸棚の中にあったはずの人形がなぜここに?
様々な思考が脳内を駆け巡りしばし硬直してしまったのだが、
早くこの場を離れた方がいいと察知しリビングへ戻った。
人間、想定外の状況に出くわすと、
案外冷静になるものだとこの時知った。
持ち主である祖母に事情を話すと、
「ど~れ?」
と腰を上げよたよたと洋室へ向かった。
細かい事は気にしない性格の祖母は、
人形を見るや否やさっさと持ち出し、
そのままごみ箱へ棄ててしまった。
とにかく不気味だったのでホッとしたのだが、
今思えば、きちんと修理をしてまた飾ってあげれば良かった、
という気持ちもある。
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コメント
コメント一覧 (7)
それにしても酷い人間がいるものだ首がとれたぐらいで