夏は、遊ぶ=海で泳ぐくらいしか、
勉強以外にする事がないド田舎が実家。

進学で地元を離れたまま、
就職、結婚して、初めて子を連れて帰省した夏の話。

昼間、明らかにはしゃぎ過ぎて、
早々に子どもは寝ちゃって、
両親と夫はまったり晩酌。

私は一人で

「親になって帰省した私」

に浸りたくて、ぶらっと散歩に。

(ここよりは)
都会で、優しい夫と可愛い子どもに恵まれ、
頑張ってる私。

この海の町は青春時代のまま…

などと派手な勘違いにドップリ浸かりつつ、
よく泳いでいた浜に向かった。

テトラポットにもたれ、
星を愛でる私…を精一杯演じて、
謎の満足感を味わい、
帰ろうかと正面に向き直ったとき、
テトラポットの影に何かいるのを目の端で察知。

犬猫サイズじゃない。

小学生くらいの背丈。

ガチャピンを雑にしたみたいなシルエットで、
一瞬で背中が冷たくなった。

その得体の知れない雑なガチャピンは、

「私っち、もんてきたんけ、ほーけ。
わしはいぬるぞな。ほいたらの」

(私っち、帰って来たのか、そうか。わしは帰るよ。またね)

と呟いて居なくなった。

翌日、
入院している拝み屋(=お祓い屋)の祖母を見舞った時、
「私っち」という学生時代のあだ名で呼ばれ、
古臭い方言で話しかけられた。

多分知り合いのイタズラだろうけど、
お盆だし怖かったと話をしたら、

「それはエンコかも(笑)。
エンコはね、私ちゃんが気になるみたいで、
地元を出た年からずっと会いたがってて、探してたよ」

って教えてくれた。

エンコとやらを詳しく知ってる口振りだったけど、
なんとなく怖くて結局聞けないまま、祖母は他界した。

オチのない話だけど、
身に起きた唯一の不思議体験。

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