仕事が終わった後、
煙草を切らしていたもんで、
煙草の自販機を探していたんだよ。

もう夜中の2時でさ、
クタクタなのに中々見つからなかった。

我慢すりゃあいいんだけど、
仕事のことでイライラしていたし、
眠いのもあってどうしても吸いたくてさ。

車でキョロキョロしながら探してると、
100mくらい先に自販機を発見した。

田舎道で真っ暗なんだけど、
その自販機だけボーッと光っている感じ。

車から降りて自販機を見るとちゃんと販売してる。
(外置きの自販機って夜中、販売規制してるよね?)

早速財布の中から300円出して、
自販機に投入。

ボタンを押したんだよ。

そうしたら、
煙草の落ちる音がしたあと、
自販機の電光表示に

『ありがとうございました』

って出た。

心の中で、
どういたしましてって冗談で思った途端、
自販機の電気が

「パシッ!」

って切れた。

うわ!なんだよ!ってびっくりしたよ。

だって灯りはその自販機しかないし、
周りは何もない畑道だ。

危ねー。金呑まれなくてよかった・・
と、煙草を取るためにしゃがもうとしたら、
自販機がいきなり再起動した。

蛍光灯がついて、
なんか電光表示に起動メッセージが出た。

まあ、接触不良かななんて思いながら、
電光表示をもう一度見てると、
そこには

『あえああえあああああ』

と表示されてた・・・

流石に怖くなって、
慌てて煙草を取ろうと手を突っ込んだら、
今度は「グニッ」と柔らかい感触が!

慌てて手を引いて走り車に乗り込み、
もう一度自販機を見たら、
煙草の取り出し口の蓋がガタガタ揺れていた。

急いで逃げたね。

もう煙草とか言ってる場合じゃなかった。

本当に死ぬかと思った。

翌日、その道を通ったら、
道端に花が供えられているだけで自販機はなかった。


後日談。

その一週間後、
会社に早朝出社したら、机の上に、
その自販機で買ったはずの、
濡れてシワシワになった煙草(マル○ロ○イトメンソール)が置いてあった。

最初は驚いたけど、ひょっとしたらさ、
何か俺に伝えたかったのかな・・なんて思ったら、
切なくなって花を供えに行った。

一緒に行った彼女は、

「きっと・・同じ煙草吸っていたんだよ。
だからお話したかったんじゃないかな。
○○と・・」

と言っていたが・・・

ごめんな。

俺はもうちょっとこっちにいたいんだ。

彼女との結婚も決まったし。

またそっちにいったら一服しながら語ろうぜ。

って手を合わせてきた。

『享年28歳 2006年1月』

そんな文字が目の前で滲んだ。

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