去年の11月の初めころから、
家の中にちょくちょく生肉が落ちている。

この間なんか、
スリッパの中にくちゃっと丸めて入れられていた。

それも、どれも売っている肉とは違って、
まだ微妙に皮と白っぽいうぶ毛がついている、
豚肉みたいなピンクの肉。

俺さ、マンションに一人暮らしなのよ。

こんな気味の悪いいたずらするような同居人、
居ないわけよ。

だから、
これといって害があるわけではないけど、
なんだか気味が悪いなー程度には思ってたの。

で、正月に久しぶりに実家に帰ったとき、
その話を親に冗談半分で言ってみたのね。

そしたら、
トーチャンとカーチャンもふざけて、

「じゃあギヤマの神さんに一回見て貰おうか」

って事になった。

この『ギヤマの神さん』っていうのは、
俺の田舎の山の中にある神社の拝み屋のばあさんの事。

ナントカっていう神様を代々守り続けて奉ってるから、
『神さん』って呼ばれてる。

ギヤマは多分屋号。

俺の田舎は、
誰かが突然居なくなったり、
狐憑きみたいになって暴れまわるようなことになったときは
まず第一にこの『ギヤマの神さん』に見て貰うって言うのが定石な、
割と迷信深い村なのよ。

んで、
お昼ごろに車走らせて親と神社に行ったんだけど、
そこで『ギヤマの神さん』に見て貰った結果。

「家に落ちてる体の一部(生肉の事)は、
あんたの元にこれから生まれてくる子供のもの。
あんたが今まで何をして来たかは私には分からんが、
あんたのせいで生まれてくる子供の体が削り取られてる。

生まれてくる子供は五体満足じゃない。
でも、きっとあんたの元に生まれてくるよ」

ってなもんだった。

俺も両親もそこまで信心深いわけではないが、
多少なりとも焦った。

でも、

「どうすれば助かりますか」

ってすがりつくカーチャンに対する、
神さんの返答は非情だった。

「私にはどうする事も出来ん。
全てはあんたの息子の業だ。
どうすることも出来ん…
関わりとうない…私まで呑まれる…」

俺としては、
その業とやらには何の身に覚えもなかったし、
始終(´∵`)こんな顔だった訳だけど、

そのまま文字通りどうする事も出来ずに、
実家を後にして数週間がたった一月の終わりごろ。

付き合ってた彼女の妊娠が判明しちゃった。

今でも家の中には、
時々生肉がへばりついてる。

俺は一体どうすればいいんだろうね。

誰か助けて。

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