8年ほど前、
俺が高校生でまだ実家にいた頃のことだけどな。

夜中の2時近くだったから家族は全員寝てて、
俺だけゲームやって起きてたんだよ。

すると玄関のチャイムが鳴ったような気がした。

俺の部屋は階段をあがってすぐなんでよく聞こえる。

それで、
こんな時間にだれか来たんだろうかと思って
降りていったんだ。

そのときは怖いという気持ちはまったくなかったな。

行ってみると、
玄関の曇りガラスの戸ごしに
外にだれかが立っているようにも見える影がある。

で、インターホンで

「どなたですか?」

と尋ねると、
やや間をおいてから、

「…ご当主様ですか」

という声がした。

インターホンを使ってるんじゃなく
ガラス戸ごしにしゃべってるんだけど、
大声ではないし、
今思い出しても男か女かもわからなかった。

俺が「いいえ息子ですが、何でしょうか?」

と返すと、

「…跡継ぎの方ですね。
…もうすぐ24年前に出した荷が届きます。
第一便です。
ここで待っていますか?」

そう言ってふっと気配が消えた。

「おっかしいな…」

と思って外に出てみようとしたら、
ダガーン!とすごい音がした。

驚いてサンダルを履きかけてたのを脱いで
廊下に上がった。

二つの丸い光が、
ガラス戸ごしに近づいてきて一瞬で玄関が壊れ、
目の前に小型トラックが飛び込んできた。

俺は後ろにひっくり返るように倒れ、
そのあと記憶がない。

…気がついたら病院にいた。

脳震盪と右の足首の骨折、
それから下半身のあちこちにガラスによる切り傷。

あとで聞いたところでは、
居眠り運転のトラックが一度電柱に激突して、
それから俺んちに突っ込んだみたいなんだ。

運転手もかなりのケガをしたらしかったが
命に別状はなく、
後でそこの会社の社長が謝りにきた。

玄関はすべて相手持ちで弁償してもらって
新しくなった。

入院中に

「なんで玄関にいたんだ」

と両親に聞かれたんで、
あったことをそのまま話したら、
親父は

「寝ぼけたんじゃないか」

みたいな反応だったけど、
母親は24年前という俺の言葉を聞いて
ちょっと顔色が変わった。

けど何も言わなかったな。

その後、
俺は大学に進学して実家を出、
そっちで就職した。

あれは何だったんだろうといまだに不思議だけど、
特に「第一便」という言葉が気になる。

これまでのところは、
俺も実家のほうもなんともないが…。

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