平成初期の田舎での話。

近所のアパートに20代くらいのお姉さんが
単身引っ越してきた。

越してきてから1年位するとその部屋から

「こら!○○!」

「○○!ダメ!」

と、夜な夜な子供を叱るような声がするようになった。

ところが、
お姉さんの近くに小さい子供がいるのを見た人は誰もいない。

叱る声はだんだんエスカレートしていき、
遂には近所中響くほどの大声で汚い言葉を叫ぶようになった。

ちょうど世間でも虐待問題が注目され始めた頃だったので、

「まさか虐待じゃない?」

と近所の人は噂した。

とある日の夜中も例によって

「○○!お前バカか!」

等と口汚く罵るような大声が聞こえてきたが、
誰かが通報したのかすぐにパトカーがやって来た。

部屋の窓からアパートの方を見ると、
野次馬もワラワラと集まっているのが見えた。

次の日からは近所中その話題でもちきり。

野次馬した人の話によると、
部屋の中に子供はいなかったので虐待ではなかった。

その代わり部屋の中に赤ちゃん用品が散乱しており、
更には水子供養の祭壇みたいなものまであったらしい。

数日経ってお姉さんの親だというごく普通そうな中年夫婦が、
近所中の家に菓子折りを持ってきた。

お姉さんは一度結婚したが、
浮気が原因で子供と別れさせられて精神を病んでいたらしい。

子供と生き別れか死別かは不明。

また妊娠中には、
子供の名前は○○にするとよく話していたそうだ。

この話が真実だとすれば、
お姉さんが病んだのは自業自得だし
近所でやったことも迷惑行為以外の何でもないが、
実体こそないが生きている人間を育児ノイローゼにするほど
リアルな悪ガキの水子霊?がいることにも驚いた。

人間の後悔の念だか何だかが生み出した得体のしれないもの、
とでも言うべきだろうか。

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