小学校に入った年だったと思うから多分7歳の時。

ところどころ記憶を補完しながら書く。

近所の仲良しの男の子や女の子5人ぐらいで、
近くの木材置き場で遊んでた。

昭和の時代、
あまり危険だという意識もなく、
子供たちの恰好の遊び場だったんだ。

みんな運動神経もそこそこ良くて、
積み上げられた木材の上を
ぴょんぴょん飛び乗って移動していくような、
元気な子たちばかりだった。

私もみんなと一緒に木材の上と飛び回って遊んでいたら、
ふいにスコーンと足元が抜けるような感覚があって、
身体が落ちて行った。

そして柔らかい湿った土の上にドスンと落ちた。

顔をしかめて起き上がったら、
360度回りが真っ暗で何も見えない。

ここの木材置き場に穴とか洞窟とかそんなのあったっけ、
とか思いながら、
その時はまだ脳天気に出口を手探りで探してた。

でもほんの少し経った時にハッと気が付いた。

なんの音も聞こえないんだ。

仲間以外にも遊んでるグループがいたし、
夕方だったからお母ちゃんが呼びに来る声なんかも聞こえてたのに。

何にも見えないし、何にも聞こえない。

急に怖くなって、心細くて、
友達の名前を順番に大声で呼んだ。

でも誰も返事してくれなくて、
どうしたらいいか分からなくてワンワン泣いてた。

泣いて泣いて、
泣きつかれてゼーゼー言いながら、

ブラウスの袖でグッと涙をぬぐった瞬間に、
目の前がふわっと明るくなった。

そしてお母ちゃんや近所のおばちゃんたちが、
私の名前を呼んで探してるのが見えた。

良かったー助かったー!と思って
お母ちゃんの方に駆け寄って行ったけど、
私に気付かないのか、
遠くを見ながら私の名前を呼び続けている。

お母ちゃん、早く帰ろうよ!お腹空いたー!って言いながら
エプロンを引っ張るんだけど、全然気付いてくれないの。

もう!早く帰らないと魔法使いチャッピーが始まっちゃうのに!
って思って、
エプロンの裾を思いっきり引っ張ったら、
レースの所がビリッて破れちゃった。

それで怒られる!と思って手を離したら、
そこで目の前が又真っ暗になった。

そこからはあまり何がどうなったのか覚えてなくて、
気が付いたら病院で寝てた。

うちから1キロ弱離れた小学校の校庭で、
タイヤを半分土に埋めた跳び箱みたいな遊具の陰に転がってたらしい。

それで遊んでて失敗したか何かで気を失ったんじゃないか
って言われたらしいんだけど、
友達はみんな一緒に木材置き場で遊んでたら
急にいなくなったって証言してて、
私自身みんなと一緒に遊んでた記憶しかなくて、
小学校に行ったことなんてこれっぽっちも覚えてなかった。

第一、当時の私は
ひとりで1キロ近くも歩いていく度胸はなかったし。

退院してから、
お母ちゃんが探しに来てくれたこと、
私が近寄っても気付いてくれなくて悲しかったことを話したら、
確かにそのあたりを探したけどおまえは居なかったって言われた。

いたよー!
エプロン引っ張ってたのに気付いてくれないだもん!って怒って、
あんまり引っ張り過ぎてレースのとこ破っちゃってごめんねって謝ったら、
お母ちゃんが目を剥いてビックリして、
本当にレースのところが破れてて、
こんなふうに破れるぐらい何処かに引っかけたらしいのに、
全然覚えがなくてどうしたんだろうって思ってたって。

だからそれ私が引っ張ったんだってば。

あれからもう何十年も経つけど、
いまだに我が家の謎になってる。

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