まだ兄弟全員が小学生だった、
雪の日の出来事。

その日は、
私の生まれた地方では2年に1回あるかないかの大雪。
(大雪って言っても30cm位)

両親も雪のため配達が出来ないので仕事が休み。

雪だというのに珍しく
兄弟3人(姉、私、妹)が家に居ました。

午後の2時位だったと思う。

「犬の散歩に行くぞ」

と、父が私たちに声をかけてくれた。

3人が3人とも「行く」と即答。

興奮気味の兄弟3人は、
喜んで薄暗い雪の世界に出かけた。

いつもの散歩コースを進んでいく4人と2匹。

いつもと違う景色や感覚に私たち兄弟と2匹は興奮し、
誰もが真っ先に新雪の上に自分の足跡を残そうと走っていた。

犬の散歩コースは、住宅地を抜け、田んぼにでて、
桑畑の間の小道を通り、聾学校前の田んぼに出てから、
公園横を歩き、しばらく外灯の少ない道を通り、
酒屋さんの横から家に戻るという、
同じ道を通らないコース。

かけっこや雪合戦に飽きた私と姉は、
聾学校の前の田んぼで大きな雪だるまを作り始めた。

2人で力を併せ、1m以上の玉、
小学生2人には大きすぎる雪の玉を造った。

あれこれ考えてみたものの、
小学生2人の力では
頭の部分となる玉を上に持ち上げることは出来ない。

仕方が無いので父に頼もうかと相談していると、

「もう帰るぞ」

と、田んぼの端から父親の声が飛んできた。

その途端、姉が駆け出した。

「○○、あそこまで競走」

姉は私に向かって叫んだ。

雪の中を疾走する姉一人。

負け時と追いかける私。

何としても追いつこうと無理をして、
バランスを崩し雪原に頭からダイブ。

火照った体に雪の冷たさは心地よく、
しばらく倒れたままでいたいと思った。

雪の中でうっとりしていると視線を感じ、
雪の中から顔をあげる。

すると、視界の端に雪の塊が見えた。

それは、なんとなく寂しそうに見える雪の塊。

雪だるまになるはずだった。

「○○おいてくぞー」

遠くから父に呼ばれ、
私は再び駆け出した。

雪原には私たちの足跡と、
2つの雪の塊だけが残された。

家に帰り、
夕食後に居間でテレビを見ていると、
天気予報で今夜半には雪が止むと言ってた。

私は

「すごくもったいない」

と感じ、

「明日も雪ならいいのに」

なんて呟いていた。

「そろそろ寝なさい」

母に催促され寝る準備を始めるが、
外の雪が止んでしまうことが気になって仕方が無い。

雪の確認をするために玄関から外に出ると、
雪はやみかけていた。

空からまばらに落ちてくる雪を見ていたら、
昼の作りかけの雪だるまのことを思い出した。

「どうなってしまったのかな?」

どうしても気になる。

私はチビとチコをお供に、
夜の銀世界へ踏み出した。

外灯に映し出される世界は、
昼間よりいっそう静寂感を引き立たせる。

昼間聞こえた車のチェーンの音もまったく聞こえなくなり、
歩みを止めると、
時折屋根や木から積もった雪が崩れる音以外
あたりは静まりかえっていた。

昼間と同じ世界に自分がいるとは思えないくらいに、
まるで世界が絵に描かれている風景のように。

私は目的である聾学校前の田んぼを目指すため足を速める。

チビとチコも昼間はしゃぎすぎたせいか、
綱を強く引く元気はない。

田んぼまで来たところで犬の綱を首輪から外すと、
2匹は私を先導するように私の5m先をゆっくり走りだした。

桑畑を抜け目的地の聾学校前の田んぼを目指す。

あと少しで桑畑の小道を抜けるというところで、
2匹が耳を立てて立ち止まると、
同時に駆け出した。

「何かある…」

私は2匹の後を追った。

20mくらい走ったところで、
前方に黒い大きな塊があることに気づいた。

「あっ!」

私は小さく悲鳴を揚げました。

それは大きな雪だるまだった。

父よりも大きなことが離れていても分かる。

誰が造ったのだろうと思いまわりを見渡すが、
もちろん私以外だれもいない。

雪だるまの裏で、
チビとチコが鼻を鳴らしている。

裏手に回ると、
そこには雪を掘り返すチコがいた。

チビは何やらあたりの匂いをクンクン嗅いでいる。

裏側から改めて雪だるまを見ると、
そこには土や稲の根や石でできた顔があった。

作りかけだったのか、
付け忘れたのか、
鼻が付いていない。

周囲を見回す。

鼻になりそうなモノはすぐに見つかりそうなのに、
鼻だけ無かった。

同時に、姉と私が造った雪の玉が無くなっていることに気づいた。

「誰かが続きをしてくれたんだ」

誰にか分からないが、
心の中でお礼を言った。

自分が造った雪の玉のありさまを見れたことで満足したのか、
チビとチコに向かい

「家に帰らなきゃ」

と呟いていた。

外灯の少ない道を通るのはさすがに恐かったので、
来た道を引き返す事にしました。

深々と降り続けようとする雪の中を犬と一緒に歩いていると、
あることに気づきました。

帰る途中には所々に雪だるまが置いてあります。

「こんなにあったんだ。
行く時には無かった気もするけど…」

行く時にはその存在にはまったく気づきませんでした。

自分の雪だるまがどうなってしまったか見るのに夢中で
気づかなかったのだろうと思い、
大して気に留めずに歩き続けます。

突然、静けさを無視するかのように、
チビとチコがさんぽの綱を強く引きます。

2匹の進もうとする方向をみると、
外灯に照らされている雪だるまの下で、
何か小さなモノが動いています。

「????何あれ???」

チビとチコに引かれるようにして、
私は外灯の下を目指します。

あと5メートルというところまで2匹が近づいたところで、
その小さな白い何かは、
雪煙をあげると雪の中に隠れてしまいました。
(私には潜ったように思えます)

近くを捜しましたが、
生き物らしきものは見つけられません。

あきらめて帰ろうとすると、
足元に黒いものが落ちていることに気づきました。

「これは何だろう?」

拾い上げると、
炭のかけらのようでした。

なんとなく外灯下の雪ダルマをみると、
眉毛が片方ありません。

「これの眉毛か…」

そう思い、
雪だるまに墨を付けようとした時に、
ハッキリ思い出しました。

「家を出た時には無かった雪ダルマだ」

徐々に恐怖心が広がっていきます。

周囲には雪ダルマを作る時に出来る道のような跡もありません。

恐る恐る雪ダルマに付いている片側の眉を取ると、
そこには黒い墨の跡が。

しかし、私が付けようとした眉あたりには
黒い染みなどありません。

「ワン」

突然1匹が吠えました。

それをきっかけに私は一目散に駆け出し、
犬も鎖に繋がず部屋に帰りました。

だれがそんな時間に無数の雪ダルマを作っていたのでしょう。

今でも分かりません。

翌日、母と一緒に雪ダルマを確認しに行くと、
近所の子供や中学生にライダーキックされたのか、
邪魔なので住人に崩されたのか、
雪の小山だけが残っていました。

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