小学校の時のおれは恐竜が好きだった。

世界最大の恐竜博にも行ったし、
恐竜の図鑑なんかもいっぱい持っていた。

なんでもないような木を
恐竜の骨だと思って大切に持っていたり、
周りのやつにたいしたことの無い知識をひけらかしたり・・・

しかし大人になった今では、
あのトカゲがものすごく怖い。

どちらかというと普通は逆
(子供のときに怖がり、大人になって興味を持つ)なのではないか、
と思う人も居るかもしれないが、おれは大人になった今、怖いのだ。

無論それには理由がある。

小学4年生のときだったか、
おれは化石を探すといっては、
家の裏にある山の中を一人でうろつくことが多くて、
その日も学校から帰ってきてすぐに山に向かった。

んで、化石化石とか言いながら10分ぐらい探してたら、
目の前にある木の一部が紫色に変色してるのを見つけたんだ。

なんというか、
木に紫色のカビ?が生えたみたいで、
ぐにゃぐにゃ動いていた。

何だこれ?とか思って持ってた木の棒で突っついた瞬間、
聴いたことも無い咆哮がおれの後ろ側から聞こえた。

ギャヤエェエーーーーー、みたいな。

甲高いような低いような、
妙な声だった。

そいつは鳥ではなかったと思う。

あんなでかい声で鳴く鳥なんて知らないしな。

んで、ちょっと怖くなって、
そーっと何があるか隠れながら見たら、
居たんだよ、恐竜が。

カナダのアルバータ州って場所で発見され、
その州の名前にちなんで名付けられた
「アルバートサウルス」ってのが居る。

まさにそれだった。

本とかで見るような可愛いもんじゃなかった。

でかい。

ライオンとかヒョウとか、
全然足元にも及ばない。

格好いいとか全然無かった。

博物館の骨ではない、
本物の恐怖だけがそこにあったんだ。

夕方だったから、周りは暗い。

木々の間にわずかに見える太陽だけが頼りだったが、
それが恐竜の体で隠されてしまったときは泣きそうになった。

山を降りるには、
あいつの横を通り抜けなきゃいけない。

やばいやばいどうしよう、と思ってたら、
焦って足を大きく動かしてしまい、
バサッと派手に音を立ててしまった。

巨大な影がのそっと動くのが見えた。

気づかれた!!

そう思って思わず目をつぶった。

ぎゅっとつぶったまま・・・
10秒、20秒・・・

何も起きなかった。

あれ、大丈夫なのか・・・?
と思ってゆっくり目を開けてみた。

大口を開けた恐竜の巨大な頭だけが、
おれの目の前にあった。

そこからは良く覚えていない。

気づいたら家で介抱されていて、
親に聞くと帰りが遅いので心配して探していたら、
山に入る入り口のところで倒れていたと。

ちょっとした騒ぎにもなっていた。

今おれが生きているということは、
少なくとも食べられなかったということだろう。

だが、あれは夢ではないんだ。

あまりの出来事に、
当時は誰にも言えなかったけれど。

本当に夢ではないんだ。

恐竜というのは
キャラクターになって可愛く表現されたり、
映画では格好いいように描かれたりしてるけれど、
元来「恐ろしい竜」なんだよな。

だから今でも、おれは、
『ジュラシック・パーク』が本当に怖い。

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