10年前、夜の田舎の鄙びた駅で
バイト帰りの終電を待っていた。
ウォークマンの音量もmaxにうつむいて読書していた俺は、
薄暗い駅に差し込む電車のヘッドライトを合図に
本を閉じて立ち上がるのを習慣としていた。
ある日、いつになく眩しい光にオヤっと思ってると、
丸いモノが全速力で駅を通過して行った。
それが直径50cm台もある巨大な生首だと、しかも笑っていたと、
…なぜか俺には分かった。
初めて見た衝撃的な光景のはずなのに、
まるで既知のことのように受け止め、
俺につきまとわないよう無関心を装った自分が怖かった。
今から考えても不思議なくらい平静な自分がいた。
やがて電車が来た。
続きを読む