かなり前だけど5年勤めた木材加工工場が、
大きな紡績工場跡地の一画に移転した。
ひと月ほどすると材木の木目に、
たくさんの顔らしきものが浮かび上がってきた。
それらしく見えるのには馴れていたから、
材木を逆にしたり裏返したりしていた。
近接する住宅の地価が結構安いので、
半分本気で購入を考えて調べてみると、
その一帯は江戸時代は「さらし場」だったらしい。
紡績工場建設時にはかなりの数の人骨が出たという。
知ってしまうと妙なもので、
数多くの顔にジロジロと見られているようで居心地が悪かった。
やがて事務所の女性事務員の腕に、
二筋のタトゥがある幻覚を見るようになってしまう始末。
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