昔、首里城下に嘉平川里之子という男がおりました。
『里之子』とは士族の男子の呼び名です。
しかし嘉平川家は名家ではなく、
王府の役職にも就いておりませんでしたので、
その暮らしぶりは裕福とは縁遠いものでした。
その上嘉平川里之子は重い胸の病気を患っており、
寝たり起きたりの生活でした。
生計を支えるため
妻のチルーは小さな商いをしておりましたが、
その合間にも機(はた)を織り、
献身的に夫を支えておりました。
妻のチルーは気立てが良いばかりではなく、
首里城下でも幾人もいないほどの美人でした。
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